慢性副鼻腔炎
特に最近の治療における手術の位置づけ
耳鼻科領域で代表的な病気に蓄膿症(慢性副鼻腔炎)があります。日本人は鼻の構造の問題(鼻中隔の彎曲など)もあって従来から蓄膿症の方が多く、ひどくなると手術治療を必要とすることが度々あります。
蓄膿症の手術という話になると、以前に手術を受けられた方からは、歯肉の上を切られて骨を鑿(のみ)で削られ、非常に痛い目に遭ったという話をよく聞きます。以前の蓄膿症は重症例が多かったのですが、最近では生活の改善、薬やネブライザーなど保存的治療の進歩により蓄膿症自体が軽症化してきたことより、必ずしも先に述べた根本的な手術が必要でなくなってきました。またマクロライドという種類の抗生剤が本来の細菌を殺す作用だけでなく、蓄膿症を根本的に(免疫作用と言われています)改善させる作用があることがわかってきました。
これにより手術も薬物治療を含めた治療の一貫と位置づけ、鼻・副鼻腔をできるだけ正常な状態に戻そうという考えより、非対称な鼻腔の形態を修復(鼻中隔の矯正、鼻甲介矯正)し、膿の溜まっている副鼻腔から鼻腔への交通路を十分につけることを手術の主体にしています。また十年くらい前より蓄膿症の手術に内視鏡(カメラ)が導入され、鼻腔からのみ手術が行える場合が多くなり、以前のような痛みや顔の腫れが軽減されてきました。加えて複雑な鼻腔が十分に観察できるため、より精巧で安全な手術ができるようになりました。今の畜膿症の手術は患者さんの負担が少なく、高齢の方でも可能になり、入院期間も短くなりました。
具体的には蓄膿症(慢性副鼻腔炎)と診断のついた患者さんには、よほど重症(大きなポリープがある場合など)でない限り、まずマクロライド系抗生剤を中心とした薬物治療を2〜3ヶ月行います。症状やレントゲン所見が改善しない場合に上記の手術をお勧めします。術後は大体2〜3ヶ月鼻処置、ネブライザー、内服治療を行い、症状が改善すれば2〜3ヶ月置きに約1年間定期的に診察させていただいています。
耳鼻咽喉科 田中寛