平成30年度 研修医(地域医療研修)
研修期間:H31.1

地域医療研修

 私は京都大学医学部付属病院で初期研修医として勤務しております。この度、地域研修として丹後中央病院で4週間と大変短い期間ではありますが学ばせて頂きました。

 丹後は地元であり、丹後中央病院には幼い頃から何度かお世話になったことがありました。大学へ進学した時より丹後からは離れておりましたので、新しくなった病院は初めてで、大きく綺麗になった姿には驚きました。丹後中央病院は、高齢化が進みゆく京丹後市の中核病院であり、京丹後地域の医療を支えています。地域医療に関して、地元の医療についての理解を深めるため、数ある診療科の中で、今回、私は消化器内科の濱田先生の下、地域医療を支える多くの方々と関わり、経験させて頂きました。

 丹後中央病院の消化器内科では、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、胆管や膵管のドレナージといった治療に加え、超音波内視鏡下での生検(EUS-FNA)や胆道ドレナージ(EUS-BD)など一部の病院でしかできないような検査・治療を受けることができ、地域医療として非常にメリットが大きいように思います。丹後圏は、縦貫道が開通したとはいえ、他の医療圏や大学病院などの基幹病院への移動に時間がかかり、それだけでも負担になってしまう。また、地域の病院で検査・治療が完結できるのは、同じ検査の重複や待機日数も面からも負担が小さいように思います。また、化学療法はもちろんのこと、緩和治療に関しても尽力しておられ、実際に膵癌や胆管癌の患者さんで、黄疸や疼痛などの症状に対して治療しながら元気に外来通院されている姿や、西洋医学の知識だけでなく、漢方を中心に東洋医学の知識も取り入れながら、患者さんの訴えに親身になって対応されている先生の姿は印象深いものがありました。

 消化器内科の医師数は濱田先生と非常勤の先生の1日当たり2人であり、その中で、上記のような検査・治療を行い、さらに、上部消化管内視鏡検査は年間約3000件、下部内視鏡検査は年間約1000件、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は年間約100件、超音波内視鏡(EUS)は年間約100件と、外来業務・病棟業務を行っておられます。これほどの検査・治療をやりくりするとなると簡単にできることではありません。看護師さん・クラークさんなど医療スタッフとの協力、実際には、患者さんをしっかりと把握する能力や指示に対する迅速で適切な対応、先を見越しての行動、急変時の対応と、カバーしながら行動できるからこそであると感じました。当たり前のようで、なかなかできることではなく、一人ひとりにしっかりと知識を持っており、コミュニケーションがとれ情報を共有でき、信頼やリスペクトといったことが必要であり、みなさんが条件を満たしておられる。丹後中央病院のすばらしさを感じました。

 医療スタッフだけでなく、診療科での協力関係も充分で、特に消化器内科と外科は相談・治療がスムーズでありました。私が外科志望でありましたので、濱田先生や消化器内科からの紹介症例に関して、手術に入らせて頂き、貴重な経験をさせて頂きました。

 実際に地域医療の現場を体験するなかで、地域の医師やコメディカルの不足、医師の局在化といった問題が私の中で顕在化してきました。専門分野でなくても、common diseaseは対応し、管理する必要があり、より多くの知識が必要となるでしょう。しかし、どれだけ質を高めても、量には限界があり、高齢化進む京丹後の需要に対応が難しくなる可能性はあり、実際に難しい場面はあるとおもいます。また、循環器内科や脳神経外科といった血管系の専門家が常に対応してくださるわけではなく、緊急時の対応は遅れることになってしまいます。常勤が待機している病院との連携を強化しても、なかなか移動が大変であり、時間的な面で厳しく、現状況では限界があるように感じます。これらの課題は以前からずっと対策を考えられていることでありますが、新専門医制度が始まり、さらに内科医が減っていき、さらに医師の局在化が進む中で、より深刻な問題になるかもしれません。私が将来的に地域医療に携わるとして、これから、濱田先生はじめ多くの方からこの研修で学んだことを糧にして、医学の面だけでなく、人としても精進していく所存です。
 
 最後になりましたが、西島病院長、濱田先生をはじめ消化器内科の先生方、外科の藤田先生、荒深先生、田中先生、多田先生、仲野先生、医局長上古先生はじめ諸先生方、2病棟の日下部師長をはじめ病棟の方々、内視鏡室の方々、その他かかわって下さった皆様方に心から感謝申し上げます。