Neurology
脳神経内科のご案内
脳神経内科とはどんな科ですか?精神科、神経科とは違うのですか?
精神科、神経科が「こころ」の病気を診るのに対し、脳神経内科は脳や脊髄、神経、筋肉の病気を診ます。
「神経」とは「神経が図太い」「神経質」というような意味合いではなく、実際に脳と体をつないで信号を送っている実体のある「神経」です。 神経は全身に張り巡らされており、考えたり(認知機能)、動かしたり(運動機能)、感じたり(感覚機能)、呼吸や血圧、発汗などを意識せずに行ったり(自律神経機能)しています。
つまり、脳神経内科は「全身を診る」科です。
脳神経内科は「脳・神経」の不調を見抜くエキスパートです。
さらには、これらの不調がホルモンバランスや電解質異常、心臓や血糖の異常などの内科的な病気から起きていることもあり、まず全身を診る事の出来る脳神経内科でどこの病気であるか見極めることが大切です。
どんな症状のある時にかかれば良いですか?
頭痛
頭痛には急に起こるもの(急性の頭痛)と繰り返し起こるもの(慢性の頭痛)があります。急性の頭痛の場合には、脳出血等の危険性もあります。慢性の頭痛については脳が原因でないものも含めて様々な原因がありますので、脳神経内科で適切に診断することが大事です。
しびれ
「しびれ」という言葉は色々な意味で使用されます。 ジンジン・ビリビリする、触っても感覚がよく分からない、という感覚の異常の時にも「しびれる」と言いますし、動かしにくい、動きがぎこちない、という運動の異常のときにも「しびれる」と言われます。
「しびれ」というと脳梗塞など脳の病気が心配になりますが、それ以外にも頸髄、腰髄などの脊髄や、末梢神経(手や足などを走っている神経)の異常が原因のことも多いですので、どこにどのような異常があるのか、脳神経内科でつきとめることが大切です。
めまい
「めまい」にも様々なものがあります。 ぐるぐる回るようなめまいもあれば、ふわふわするようなめまいもあります。それ以外にも、立った時にフーッと血の気の引くような立ちくらみや、体のバランスが取れなくてふらふらする場合にも「めまい」と表現される事があります。 脳梗塞などの脳が原因の危険なめまいもありますので、脳神経内科で診てもらいましょう。その他には耳の奥の内耳が原因の事もあり、その場合には耳鼻科に診てもらう事もあります。
物忘れ
物忘れには「加齢」によるものと「認知症」とがあります。 「加齢」によるものは脳の生理的な老化で、よく考えたり、ヒントを与えられたりすれば思い出す事が出来ます。
「認知症」は脳の神経細胞が減る病気で、忘れたとこを思い出す事も困難で、自覚症状も無い事もあります。
認知症の原因としてはアルツハイマー病が有名ですが、それ以外にもいくつかの原因があります。また、中には正常圧水頭症やホルモン異常、ビタミン不足などが原因で起こる、「治る認知症」というものもあります。これらの病気を見逃さないためにも、脳神経内科を受診してみましょう。
うまく力が入らない
手足を動かすには、脳からの指令が脊髄、末梢神経を通って筋肉に伝わる必要があります。ですので、脳、脊髄、末梢神経、筋肉のどこに異常があっても力が入らなくなります。どこに原因があるのかを、脳神経内科で診てもらいましょう。
歩きにくい
「歩く」というのは非常に高度な運動です。脚でしっかり体を支え、バランスをとりながら「歩く」必要があります。
膝関節痛や腰痛でも歩く事は困難になりますし、立ちくらみ、平衡感覚機能の障害、筋力の低下や脚が突っ張ってしまうことが原因でも歩きにくくなります。
何が歩きにくい原因なのか、脳神経内科で診てもらいましょう。
筋肉がピクピクする、けいれん
一部の筋肉がピクピクする軽いものから、てんかんで見られるような全身けいれんまでさまざまな症状があります。足がつる、こむら返り、のような症状もあります。
てんかんのような脳の病気、神経、筋肉の病気など、様々な病気が考えられますので、脳神経内科に相談して下さい。
震える、勝手に動く(不随意運動)
「震える」と一言で言っても、じっとしている時にゆっくり震えるものや、ものを持った時に細かく早く震えるものや、手だけ震えるものや、全身震えるものや、様々です。
「勝手に動く」のも、一瞬ビクッとなるものや、大きくゆっくりガクガク動くものなど、様々です。 その動きの性状から、疑われる原因も異なってきますので、脳神経内科に診てもらいましょう。
意識がおかしい(おかしかった)
1分ぐらい気を失っていた、1時間くらい様子がおかしくて記憶が無い、ここ1週間意識がはっきりしない、様子がおかしい、など意識の異常が起こる事があります。
脳が原因の事もありますし、それ以外の内科の病気や薬の副作用が原因であることもあります。内科の病気も診る事の出来る、脳神経内科に相談してみましょう。
どんな病気を診る科なのですか?
頭痛
頭痛には大きく分けて、脳腫瘍や髄膜炎、くも膜下出血などの脳の病気から引き起こされる頭痛である「症候性頭痛」と、他に病気があるのではなく、頭痛が繰り返される、もしくは持続する「慢性頭痛症」とがあります。
「症候性頭痛」については、速やかに原因を突き止める必要があります。
「慢性頭痛症」には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、頭痛薬の過剰使用に伴う頭痛、などがあります。
片頭痛
頭の片側に起こることから名付けられましたが、両側に痛みが起こる方もおられます。 「前兆」を伴うものや伴わないもの等に細分されますが、「前兆を伴う片頭痛」の場合には、頭痛の前にキラキラした光、ギザギザした光(閃輝暗点)などの「前兆」が出現し、その後片頭痛が起きます。ドクドク脈打つ(拍動性)頭痛が特徴的で、吐き気や嘔吐、感覚過敏(音や光に敏感になり、不快である)を伴う事も多いですが、そうでない方もおられます。
頭痛が起きた時の治療としては、一般的な鎮痛薬の他に、トリプタン系薬剤を使用します。 また、片頭痛発作の頻度が多い人や、ひどい人には予防薬(Ca拮抗薬、β遮断薬、一部の抗てんかん薬)を使用することもあります。
緊張型頭痛
精神的ストレスや肩や首の凝りから来る頭痛です。典型的には、後頭部や頭の周囲が圧迫されるような、締め付けられるような、ジワーっと重だるい非拍動性の頭痛が両側性に起きます。
頭痛が起きた時には、鎮痛薬が有効です。重症の場合には抗不安薬を使用する事もありますが、一時的にとどめた方が良いでしょう。
パソコン作業やスマートフォン操作を長時間続けない、適度に首や肩を動かす、マッサージや運動をする、などの肩や首の凝りを改善する事も大事です。
脳卒中
脳の血管が詰まる(脳梗塞)、破れる(脳出血)ことで、脳が損傷を受ける病気です。脳の障害を受けた部位に応じて、運動麻痺や感覚障害、呂律(ろれつ)の障害、歩行障害などが、「突然」起きます。
脳梗塞には、高血圧や糖尿病、脂質異常症などによる動脈硬化が原因であるものと、心房細動という心臓の不整脈により心臓内に出来た血栓が脳の血管に飛んで出来るものがあり、治療薬が異なってきます。動脈硬化が原因の場合には抗血小板薬、心臓の血栓が原因の場合には抗凝固薬を使用します。
これらの薬にはいくつか種類があり、患者さんにあわせて薬を選択します。
また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの内科治療も並行して行う必要がありますし、リハビリテーションをする事もあります。
「脳神経」のエキスパートであり、「内科」でもある脳神経内科では、これらの事を総合的に診ています。
一度脳梗塞を起こされた患者さんでは再発予防も重要となりますので、継続して通院治療をしていく事が重要です。
認知症
認知症と一言で言っても、色々な種類があります。頻度の多い病気を挙げますと、
- アルツハイマー型認知症 3-3-1
- レビー小体型認知症 3-3-2
- 血管性認知症 3-3-3
があります。 その他にも、認知症の原因となる病気は色々あります。
なかには、もとの病気を治療することで症状が治る、「治る認知症」と言われる病気もあります。脳の病気としては、正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)(3-3-4)や慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)(3-3-5)という病気があります。脳の病気以外にも、甲状腺機能低下症や薬剤の副作用、うつ病といった、全身の内科的病気からも認知症のような症状が引き起こされることがあります。
これらの「治る認知症」は、早期に発見して治療することが大切です。脳だけでなく、全身の病気も診る事が出来る脳神経内科で診てもらいましょう。
アルツハイマー型認知症
「アミロイドβ(ベータ)」や「タウ」と呼ばれる特殊なたんぱく質が脳内に溜まり、神経細胞が死滅して行く事が原因と考えられています。記憶をつかさどる「海馬(かいば)」という部位を中心に脳の萎縮が進行し、「記憶障害」(新しい事が覚えにくくなる)が主な症状として出ます。誰しも年をとると「物忘れ」が出てきますが、加齢による物忘れとアルツハイマー病による物忘れには違いがあります。
加齢による物忘れ
- 出来事、体験の一部分を忘れる
- 昔の事を思い出せない
- ゆっくり考えたり、ヒントがあれば思い出せる
- 日常生活に支障がない
- 忘れっぽい事を自覚している
アルツハイマー型認知症による物忘れ
- 出来事、体験の全体を忘れる (ごっそり記憶が抜ける)
- 新しい事を記憶できない (昔の事は良く覚えている)
- ゆっくり考えても、ヒントがあっても思い出せない
- 日常生活に支障がある
- 忘れた事の自覚が無い
アルツハイマー型認知症の治療
アルツハイマー型認知症で失われた記憶や機能を回復させ、病気を完全に治すお薬は今のところありません。現在使用されている治療薬は、症状をいくぶん改善する効果は示されているものの、病気の進行抑制という面では効果不十分と言わざるを得ないのが現状です。
認知症では物忘れや判断能力の低下といった「中核(ちゅうかく)症状」以外にも、怒りっぽくなる、幻覚や不安、徘徊、意欲の低下などの「周辺症状」が見られますので、これらに対する治療も大切です。
レビー小体型認知症
脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質の塊が蓄積し、神経細胞が死滅して行く事が原因と考えられています。実際にはいない人が見えたり、物が見えたりする「幻視」が特徴的で、手足の震えや、歩き方が小刻みになる「パーキンソン症状」が伴うこともあります。時間帯や日によって症状の変動が大きく、頭がはっきりしている状態と、ボーとして判断力が低下している状態が入れ替わり起こります。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血により認知症になるものです。障害される脳の場所や程度によって症状が異なります。そのため、出来る事と出来ない事が比較的はっきりと分かれており、「まだら認知症」とも言われます。記憶力は比較的保たれることが多いです。
正常圧水頭症
脳の中にある「脳室」に「脳脊髄液(のうせきずいえき)」が溜まり、脳が圧迫される事により生じます。歩行障害(あるきにくさ)、物忘れ(ぼーっとしている)、排尿障害(トイレに間に合わず、失禁してしまう)という症状が見られます。
シャント術(脳室に溜まった脳脊髄液をお腹などに流すチューブを埋め込む手術)により症状が改善される可能性があります。
慢性硬膜下血腫
頭部をぶつけた数週間~数ヶ月後に、頭部の頭蓋骨の下にある「硬膜(こうまく)」と脳との隙間に血(血腫)が貯まり、血腫が脳を圧迫してしまう病気です。 頭痛や、麻痺(歩きにくい)、認知症のような症状(ぼーっとして反応が鈍い)などの症状が出ます。血腫を除去する手術により、症状が改善される可能性があります。
てんかん
大脳の神経細胞はお互いに調和しながら電気的活動を行っています。そのリズムが崩れて、異常な電気的活動(神経細胞の過剰興奮)が生じる事によって起きるのが「てんかん発作」です。
全身がガクガク震えるけいれん発作(大発作)が有名ですが、短時間意識がなくなる発作や、意識がありながら手足が勝手に動くような発作もあります。
てんかん発作を繰り返す病気が、てんかんです。
てんかんは小児の病気というイメージが強いですが、近年では高齢者に発症するてんかんも増えてきており、問題となっています。
てんかんの診断には、発作時の詳細な様子、脳波検査、MRI検査、採血検査など、総合的に判断する必要があります。
治療は抗てんかん薬による内服治療が中心となりますが、適切な治療で70-80%は良好なコントロールが得られると言われています。薬でも発作をコントロールできない場合は「難治性てんかん」と呼ばれますが、このような患者さんの場合は京都大学医学部附属病院などに紹介することもあります。
てんかんの診断、薬の選択などには専門的な知識が必要ですので、「脳神経」の専門家である脳神経内科で診てもらいましょう。
パーキンソン病
脳の異常から、主に体の動きに障害が出る病気です。代表的な症状としては以下のような物が挙げられます。
- 寡動(かどう)、無動(むどう):動作が遅い、小さい。歩く速度が遅く、歩幅が狭くなる。
- 振戦(しんせん):安静にしている時に手足が震える。
- 固縮(こしゅく)、筋強剛(きんきょうごう):筋肉の緊張が強く、動きが固い。
- 姿勢反射障害(しせいはんしゃ障害):バランスを取りにくく、よく転ける。
それ以外にも、便秘、排尿障害(尿が出にくい)、立ちくらみ、起立性低血圧、睡眠障害、うつ症状などを伴う事もあります。
脳内で運動の調節をしている「ドパミン」という神経伝達物質があるのですが、パーキンソン病ではドパミンを分泌する「ドパミン神経」が進行性に減少してしまいます。 ですので、症状はゆっくりとですが、徐々に進行します。
パーキンソン病では血液検査、脳のCTやМRIでは異常は現れません。
MIBG心筋シンチやDATスキャンという検査で異常がみられることがありますが、放射性同位元素を使った検査であり、施行可能な医療機関は限られます。
何よりもまず、症状をしっかりと診察することが診断にもっとも大切なことです。 また、パーキンソン病と似た症状を示す病気もいくつかあり、「パーキンソン症候群」と呼ばれます。これらの病気の可能性が無いかどうか診て行く事も重要です。
パーキンソン病の治療としては、病気の進行(ドパミン神経の減少)を止める、遅らせる治療というものは現時点でありません。しかし、症状を改善させる治療薬はたくさんの種類があり、それぞれの長所、短所をよく理解して、患者さんに合わせて使う必要があります。
診断、治療とも、脳神経内科が専門に行っています。
神経・筋の免疫疾患
人の体には、外界からやってくるウイルスや細菌を攻撃して身を守るシステムが備わっており、それを「免疫システム」と呼びます。
しかし、この「免疫システム」が誤って自分自身の体を攻撃してしまう事で、病気になってしまう事があります。
このような病気を「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」と呼びます。
脳神経・筋肉にも「自己免疫疾患」が存在し、具体的には多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)、重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)、多発筋炎(たはつきんえん)、皮膚筋炎(ひふきんえん)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつしんけいえん)/多巣性(たそうせい)運動ニューロパチー、といったような病気があります。
これらの病気では、免疫に作用する薬(ステロイド、免疫抑制剤、疾患修飾薬、グロブリン製剤など)を使用して治療に当たります。脳神経内科ではこれらの病気も診ています。
その他の神経難病
神経の病気の中で、原因や治療法がはっきりとしないものを、一般に「神経難病」と呼んでいます。具体的には、
- 筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)
- 脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)
- 脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)
パーキンソン病
- 進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)
- 多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)
- 多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)
- 重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)
などです。
難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)となっているものもあります。
パーキンソン病、多発性硬化症、重症筋無力症のようにある一定治療法のあるものありますが、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症のように効果を実感できるような治療法がない病気が存在するのも事実です。仮に直接的な治療法がなくとも、医療として少しでも生活しやすくするために出来ることはありますし、新しい治療法の研究もなされています。
脳神経内科では、神経難病の患者さんとも日々向き合っています。
丹後中央病院で全部検査できるのでしょうか。
まずは脳神経内科を受診し、症状を聞いて(問診)、診て(診察)もらって下さい。
医学界では問診と診察で7~8割の病気は診断出来るといわれており、もっとも重要な事とされています。
問診と診察から、疑われる「病名」が挙りますので、それに対する「検査」をします。 丹後中央病院ではCT、MRI、超音波エコー、脳波、採血検査などが行えます。
当院で施行できない特殊な検査については、施行可能な施設を紹介致します。また、入院して検査が必要な場合などは、京都大学医学部附属病院などに紹介することもあります。患者さんが適切な医療を受けられるように致します。
脳神経内科 外来担当医表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土(第2.4週) | |
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午前 地下4診 | 第1,3,4,5:安田 10:00~ 第2:中村 10:00~ | 柳田 隔週交代制 大平 10:00~ | 認知症外来 隔週交代制 和田 月田 10:00~ |
医師紹介
兵庫医科大学 平成23年卒
日本神経学会認定 神経内科専門医
日本神経学会
京都大学 平成26年卒
日本神経学会認定 神経内科専門医
日本神経学会
京都大学 平成26年卒
日本神経学会認定 神経内科専門医
日本神経学会
金沢大学 平成27年卒
日本神経学会認定 神経内科専門医
京都大学 平成27年卒
日本神経学会認定 神経内科専門医
日本神経学会