平成27年度 研修医(地域医療研修)
研修期間:H27.7

 地域実習として丹後中央病院消化器内科で7月の1ヶ月間研修させていただいた。

 丹後中央病院は京丹後の中央に位置し一般病棟200床、回復期リハビリ病棟100床、計300床程度の病院であり、診療科としては内科では消化器内科、神経内科、循環器内科、血液内科、呼吸器内科、糖尿病内分泌内科、外科では一般外科、整形外科、産婦人科、他に眼科、耳鼻科、泌尿器科、皮膚科があった。普段研修している大学病院を初めとする都市部の総合病院との違い等、研修を通して感じたことを書いていきたい。

 まず初めに医師、特に常勤医師が少ないことに驚いた。研修させていただいた消化器内科では20人程度の入院患者がいたが、常勤医師は1人で毎日朝から夕まで内視鏡あるいは外来があるため病棟業務はその前後にされていた。大学病院の消化器内科で研修した際は40〜50人程度の入院患者を3グループで診ており、上級医、中間医、大学院生、研修医の4、5人ほどからなるグループで15人ほどの患者を診ていたので、医師の数の違いを感じた。

 次に常勤医師のいる診療科が少ないため専門科以外の患者も自分で診る必要があった。消化器内科の病棟も消化器疾患に限らず、肺炎や腎盂腎炎などの感染症、血糖コントロール目的の糖尿病患者、肺がん、膠原病、蜂によるアナフィラキシーショックなど多様な患者が入院していた。都市部の総合病院では専門外の疾患は他科にコンサルトして診て頂くことが多いが地域ではこのように専門外の疾患を自分で診なければならない状況も多く、専門に偏らない診療能力が必要であると感じた。

 また専門科内であっても大病院では専門の細分化が進んでおり、例えば大学病院では癌グループ、肝臓グループ、胆膵グループ、炎症性腸疾患グループのように分かれており、内視鏡、ESD、ERCP、RFA等をする医師はそれぞれ固定しており、各グループの医師が他の処置をするのは見かけなかったが、この病院では、RFA、TACEはしていないようであったが、内視鏡、ESD、ERCPは1人で行っておられた。日本全土、各地域にそれぞれの分野の専門家を確保するのは不可能であり、幅広い処置をこなせる人材が必要とされていると感じた。

 一方、地域にも専門性をもった医師が必要な分野もある。日本には都市部以外に暮らしている人も大勢おり全ての地域で必ずしも先端医療、専門治療が受けられる必要はないしそのようなことは不可能である。特殊な治療が必要なら都市の病院、大きな病院に紹介すればよいが、例えば心筋梗塞のように特殊な設備と専門科をもった施設が必要だが、治療に急を要する疾患の場合、やはり都市部と地域では受けられる医療、救命の可能性に差が出てしまうと感じた。全国の国民に均等な医療を提供するのは難しいが、その点に関しては交通網、ドクターヘリなど大きな病院への移送に必要なインフラの整備で対応する必要がある。

 普段、大学病院にいると医療知識、技術の専門性が強調されがちだが、幅広い分野でプライマリーを診ることができる医師、地域でも多数の人が必要とする検査・処置ができる医師、急を要する疾患の処置ができる医師が全国で必要とされていることを感じた1ヶ月であった。指定された大きな病院で研修することになっている現在の研修制度では感じにくいこうした一面を見ることが地域実習の目的の一つであったのだろうと感じた。

 最後になりましたがお忙しいなか研修を受け入れてくださった消化器内科の濵田先生、スタッフの方々に感謝申し上げます。1ヶ月間ありがとうございました。