平成30年度 研修医(地域医療研修)
研修期間:H30.09

地域医療研修

 一カ月間、京都丹後中央病院の消化器内科で研修させていただきました。現在、私は京都大学医学部附属病院にて研修医2年目として勤務しており、京都丹後中央病院には地域実習期間という、地域に根付いた病院で一カ月間研修をする期間に研修させていただきました。
 研修前にホームページにて京都丹後中央病院の消化器内科について検索すると、地域病院でありながら、上部消化管内視鏡検査は年間2000件強、下部消化管内視鏡検査1000件強、ERCP100件強、EUS100件強(以上H24.10〜H25.9)と積極的に手技を行っておりました。また、常勤の医師はM田先生のみで、非常勤の医師と協力して業務にあたっている様子でした。私自身、消化器内科志望であるため、昨年は静岡の市中病院、今年は京都大学医学部付属病院の消化器内科にて研修を行ったことに加え、様々な病院の消化器内科の見学をさせていただきました。消化器内科全体の手技の件数は、いままで経験した病院の方が多くはありましたが、一人あたりの件数を考えると京都丹後中央病院の方が多い印象でした。内視鏡手技以外にも救急対応や病棟業務も考慮すると、かなりの仕事量であり、どのようにして業務を行っているのであろうと研修開始前のわたしは少々不思議に感じていました。

 実際に研修を始めると、今までの研修とは全く異なる環境でした。病棟業務では看護師さんが患者さんの病状を毎日細かく報告し、それを受けてM田先生が新しく指示を出したり、治療を行っていました。内視鏡検査室では、患者さんの誘導や手技の説明を始め、EMRやERCPの補助も看護師さんが手際よく行っていました。外来業務では、日に何十人という患者さんが診察を受けに来る中で、医療クラークさんが医師が無駄なく診察を行えるように様々な配慮をしていました。
 大病院だと研修医や若い医師が行うことも看護師さんや医療クラークさんが行い、そのことでM田先生は医療行為に集中でき、膨大な業務を行うことが可能となっていました。大病院に比べ医療従事者が少ないために、一人一人の仕事量が多く、また責任は重いものとなっていました。しかし、M田先生を始め看護師さんや医療クラークさんなどは、その事を苦とは感じていない様子で、「人数が少ないから仕方ないわ。」と言いながらも活き活きと仕事をしていることがとても印象的でした。

 どうすれば患者さんにより上質な医療を提供でき、また同時に医療従事者がより快適に仕事ができるかを考え意見を活発に交換していました。例えば、内視鏡検査室では鎮静剤について試行錯誤されていました。内視鏡検査の際に鎮静剤を使用する場合、現段階では患者一人で帰ることはできず、お迎えが必要となります。丹後は車社会であり将来的に患者さん自身の運転で帰宅できるようにするため鎮静剤の種類や量について意見が交わされていました。M田先生が他の医療従事者と良い距離感を保ちつつ、無駄なく仕事をすることで素晴らしい関係性が出来上がっていました。そこには地域の病院だからこそできる連携がありました。
 意見交換は病院内だけで行われている訳ではありません。地域病院だとなかなか勉強会などの情報交換の場所もないのかなと思っていたのですが、M田先生は京大病院や他病院から来る医師と最新の治療動向について意見交換を行い、最新の治療を取り入れていました。
 またM田先生自身も便秘の治療法や漢方薬に大変精通されており、各地で講演会を行っていました。便秘については外来に受診した患者さんが訴えることが大変に多いです。便秘となると、どうしても患者さんの訴えのみで薬剤を処方しがちですが、M田先生は腹部レントゲンを撮像し他覚的に判断した上で薬剤を処方します。実際に腹部レントゲンを撮像してみると、患者さん自身はすっきりしたと言っていても便が腸管内に溜まっていたり、逆に患者さんは全然すっきりしないと言っていても腸管内は便がなくきれいな状態であったりなど、自覚症状と他覚的所見に乖離があることがありました。私はこれまで便秘を訴える患者さんに腹部レントゲンを撮像することは少なかったため、こういった乖離があることに驚くと同時に、腹部レントゲンを撮像することで、患者さんにも分かりやすく便の貯留具合の説明ができると感じ、今後の治療に活用しようと思いました。
 漢方薬については、研修前は術後に大建中湯を処方することがあるくらいの知識しかありませんでしたが、M田先生から漢方薬の本を貸していただき、読んでみると漢方薬は大変に奥が深い領域だと知りました。西洋医学では患者さんの訴えがあっても検査で異常がないと、治療方針の決定に難渋し時には何もできないこともあります。しかし、漢方薬などの東洋医学では患者さんの主訴を元に処方するので、例えば、先ほどの便秘の話で、患者さんはすっきりしていないけど腹部レントゲンでは腸管内に便は貯留していないといった状況で漢方薬は役に立ちます。もちろん便秘に関してだけではなく、不定愁訴と言われる症状についても漢方薬で治療をすることが可能となります。M田先生は西洋医学と東洋医学をうまく使い患者さんの訴えや症状に対応しており、処方ひとつをとっても大変勉強になりました。
 そしてもう一つ私にとって刺激的で勉強になったのは、内視鏡検査でした。私は消化器内科志望ですが中々内視鏡検査ができる機会がこれまでにありませんでした。しかし今回の研修では機会を頂けました。実際に内視鏡検査を行ってみると、イメージとは異なり操作がうまくいかなかったり、写真がぶれてしまったりしましたが、M田先生の指導の下、少しずつではありますが上達を感じることができ大変感激しました。自分でやってみると、上級医の先生方の内視鏡操作の熟練具合をより理解することができ、今後の修練のモチベーションに繋がりました。
 
 丹後に来たのは今回の研修が初めてでしたが、豊かな自然に囲まれ食べ物もおいしいものばかりでした。休日には天橋立に観光に行ったり、湖畔にあるおいしいイタリアンレストランに行ったりと充実した時間を過ごすことができました。丹後は牡蠣やカニが大変有名ですが、9月に行ったため時期が合わず堪能できなかったので、後日再訪したいと思います。

 京都丹後中央病院は、地域の病院の最大の武器である職種間連携を遺憾なく発揮することで、患者さんに上質な医療提供し地域発展に貢献していました。研修させていただき、医学知識や医療行為の習得はもちろんのこと、いかに職種間で協力し助け合える職場作りをするのかも医師として学んでいかなければならないと感じました。

 最後になりましたが、院長先生、M田先生を始めとする諸先生方、看護師さん、その他関わってくださった皆様は大変感謝しております。一カ月間、誠にありがとうございました。