令和2年度 地域医療研修の感想
研修期間:2020.07

 私は京都桂病院で初期研修医2年目として勤務しております。その一環として地域医療研修として丹後中央病院で4週間研修させて頂きました。研修は消化器内科濱田先生に指導して頂きました。消化器内科としてだけでなく地域医療の面で京都市の医療とは異なった側面を多く見ることができ大変勉強になりました。
 
 研修させて頂き、まず感銘を受けた患者さんからの信頼の強さでした。地域では人と人とのつながりが強く、病気だけではなく患者さんを診るといった意識は今までも意識してきたことですが、家族全体、ひいては町や市を診ている印象を受けました。実際患者から「〇〇さんが先生にお世話になって…」「〇〇さんはこういった治療を受けて凄く元気になったから私にもしてほしい」といったことを耳にする機会が多かったです。それは全てが正しい訳ではなくマイナスに働くこともありましたが、働いている先生方は上手に親戚家族や友人関係を上手く対応していることが印象的で普段の診療では得られない知識を得ることができました。
 またコメディカルの方との連携についても感銘を受けました。当院や学生時代に見てきた大学病院よりも患者さんの数に比べて医師の数が少ないこともあり、処方や検査の連携が密で迅速に行われていました。コミュニケーションもスムーズで看護師さん、医療事務さん、検査技師さん含め急な対応でもお互い快く業務をされており、普段のコミュニケーションを円滑に行うことの重要性を再認識することができました。
 研修の一環として病棟の患者さんを多く担当させて頂きました。今までの研修病院での研修では専門科の病気を診て、退院してもらうのがゴールでした。しかし丹後中央病院では消化器的疾患だけでなく、患者さんの生活背景まで考慮し、その後の生活、家族構成、仕事まで考慮して退院、治療を調整していることに感銘を受けました。
 また、濱田先生は西洋医学だけでなく漢方にも精通しておられ、入院・外来問わず個々人の症状・身体活動度等に合わせた処方を行っていることも非常に印象的でした。漢方薬には以前から興味がありましたが、速効性に乏しい、味が悪くコンプライアンスが悪い等の印象があり自分で処方する機会はほとんどありませんでした。しかし患者さんにしっかりと説明し、個人に合った処方を選ぶことで患者さんも納得し飲み続けてくれる、また患者さんも処方を理解している方が多く意味づけされているので、効果が乏しかったり副作用が出る際には相談し、調節を細かく行うことができていました。消化器内科といえば急性期のイメージが強く、内視鏡による処置、人間ドック等のスクリーニングのイメージが強かったのですが、そういった日々の多忙な業務の中でも慢性期の方のきめ細やかな調整までしっかりと行っている点はまさに医師のあるべき姿と実感することができました。
 研修病院ではあまり見ることがなかった手技・処置等を経験できたことも私にとってとても有意義でした。その中でも印象的だったのが、PTEG(経皮経食道胃管挿入術)という処置です。PTEGは胃瘻造設が困難な症例等に対して首の付け根から食道⇒胃へと栄養チューブを入れる手技でした。一見すると侵襲性が高い手技でしたが、留置後は患者さんの不快感は少ないように見えました。私が研修中にPTEGを留置された患者さんは胃癌術後の方で半年以上、口から食べ物を摂取しておらず、経口摂取する度に嘔吐してしまっていました。患者さんは経口摂取に対する恐怖感が強く、腸管の蠕動低下に伴う腹部膨満感、腹痛に悩まされていました。しかし最初は経腸栄養に対する拒否感もありましたが、腸管を動かす薬や経腸栄養を少しずつ開始していくと、徐々に腸管蠕動が回復し、これらの症状が改善していきました。また本人の自覚症状の改善に伴って、明るさをまして毎日の診察で日に日に元気になっていく様子を見ることができました。最後には自ら経腸栄養を調節し、口からジュースやお菓子を食べてみたいといった言葉も聞くことができました。今まで高齢者の経管栄養に対しては苦痛が大きい、延命治療の一環のイメージが強かったですが、使い方や患者さんとのコミュニケーションによってはQOLの向上、患者さんの状態改善に繋がるのだと認識をすることができました。

 最後となりましたが、M田先生を始めとする諸先生方、看護師さん、秘書さん、クラークさん、そのほかお世話になった方々に心よりお礼申し上げます。1カ月という短い期間でしたが今後の医師人生の為、大変有意義な研修をさせて頂きました。