令和2年度 地域医療研修の感想
研修期間:2020.09

 私は京都桂病院より、2020年8月24日より約一ヶ月丹後中央病院の消化器内科で研修させて頂きました。お恥ずかしい限りですが「地域医療」と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、某ドラマの様に白衣姿で自転車に跨がり海沿いを駆けていく医師、少しレトロな診療所の建物、休み時間には美しい海で照りつける太陽のもとで釣りを楽しみ、素朴で親切な街の人々との触れ合い、地元産の名物(都会には出回らない!)、美味しい地酒…といった光景でした。当然ですが、私の想像は大外れでした。美しい海、優しい人々、美味しい食べ物とお酒がある…という点以外は。
 研修内容は、まず朝に病棟を周り、午前中は上部消化管内視鏡、午後は下部消化管内視鏡、それが終わると午後3時ごろからE R C Pや胆管ステントなどの手技を場合によってはかなり遅くまでみっちり見学させて頂き、水曜日は外来見学となっていました。
 「人口が少ない地域の医療は患者数が少ないため暇である」というイメージは「地域医療とはここしか頼れる病院がないため多岐に及ぶ業務を少人数でこなす激務である」と一気に塗り替えられました。消化器内科の医師が2人だけとは思えない量の質、量、種類の診療をこなしており、それをサポートする看護師さん、クラークさんは笑顔を絶やさずテキパキと膨大な業務を片付けていらっしゃいました。また、外来では癌などの疾患のフォローだけでなくそれに伴う便秘や倦怠感などの不定愁訴に対しても丁寧にアセスメントし、処方を行なっていらっしゃいました。その際に薬を細く使い分けておられ、その使い分けのコツも伝授してくださいました。濱田先生は漢方薬にも精通しておられ、今まで使ったことのない薬についても多く学ばせて頂きました。私は消化器内科を志望しているわけではないのですが、その私に合わせてご多忙の間を縫って将来役に立つ知識を丁寧に教えてくださいました。濱田先生の外来診療で最も印象的であったのは無駄な薬を使用しないという姿勢でした。効果が強すぎる薬や、過剰に投与されている薬、以前処方されてそのまま何となく継続されている薬などを中止・変更され無駄も不足もない処方を心がけておられました。
 また、患者様の雰囲気の違いも学んだ点の一つでした。守秘義務がありますので細かくは書けないのですが、治療法の選択の場面で私が日頃診ている患者様とは異なった選択をされたことがありました。戸惑う私に濱田先生は、地域で祖父や親の代から付き合いのある人の病や死を間近で見てきているため死生観が異なっており、その希望に答えるのも大切な医療であると教えてくださいました。
 私は研修医の2年間で4つの病院に勤務する機会に恵まれました。医師として駆け出しの時に多くの病院をまわり、それぞれの病院の違いや求められる役割、機能を学ぶことは非常に重要であると考えます。地域医療研修が丹後中央病院で本当に良かったと思います。丹後中央病院の先生方、関係者の皆様に心より御礼申し上げます。