濵田暁彦医師 コラム No.101
2020/07/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.235」2020年8月号掲載)

「肩凝り(こり)」の話〜その2:「様々な手技療法の違いとは?」


現在のように、テレビやパソコン、スマートフォンの画面を凝視することが多くなると疲れ目や肩凝りになりがちです。かく言う私も肩凝りに悩む一人で、最近「整体」や「マッサージ」を利用することが多くなりました。世の中には似た様ないわゆる「手技療法(手で行う療法)」を提供するサービスが何種類もあり、それぞれがどの様な内容なのか今ひとつよく解らないと思います。そのため今回代表的な手技療法についてまとめてみました。

 国家資格となっている手技療法としては「按摩(あんま)」「マッサージ」「指圧」「柔道整復」「理学療法」の5種類があります。それ以外の「整体」「カイロプラクティック」「オステオパシー」「リフレクソロジー」などは現在の日本では手技療法の国家資格としては認められていません。「按摩(あんま)」は、「按」=押さえる、「摩」=なでるという意味の2文字で呼ばれますが、実際は「押す、揉(も)む、さする、なでる、叩(たた)く」などの手技を用います。古代中国で発祥した療法で、奈良時代には日本に伝わっており、江戸時代に本格的に盛んになりました。現在中国では「推拿(すいな)」と呼ばれ100種類以上手技を用い非常に発達しています。また日本では、鎌倉時代の「琵琶法師」を由来とする音楽を職業とする「当道座」という男性視覚障害者組合が存在していましたが、当道座は江戸幕府によって視覚障害者の保護政策として公認され、江戸時代には三味線や箏の演奏家、作曲家などとして活躍しました。箏の名曲「六段の調べ」の作曲家:江戸前期の八橋検校(やつはしけんぎょう)などが有名です。当道座は音楽業と共に、按摩・鍼灸(せんきゅう)(あんま・はり・きゅう:略して「あはき業」)も主要な職業とし、現在でもその伝統は守られています。しかしこのあんまという言葉が視覚障害者に対する差別的な使われ方をすることもあったため広告や看板には「マッサージ」と表記する場合も多いと言われています。
 正確には「マッサージ:massage(マサージュ)」は元々フランス語で、ヨーロッパ発祥の手技療法を指す言葉です。按摩が中国医学の陰陽五行論を基として経絡・経穴(けいらく・けいけつ)の理論に従って衣服の上から、体の中心部から末梢側に向かって揉むのに対して、ヨーロッパ発祥のマッサージはリンパや静脈循環の改善を目的として、直接皮膚を触り、末梢側から心臓に向かって求心的に揉むことが特徴で、アロマオイルなどを塗りながら揉むことも多く、アロママッサージ、オイルトリートメント、リンパドレナージュと言ったセラピー(療法)はこのヨーロッパ由来のマッサージを基としていると考えられます。またインド伝統医学の「アーユルヴェーダ」でも似た様なオイルを用いた全身のマッサージ療法があり、インド医学とヨーロッパ医学(ユナニ医学=ギリシャ・アラビア医学)は古くからお互いに影響し合っていたと考えられます。
 次回も今回に続き、アメリカ発祥の手技療法や整体、指圧などについてお話しします。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会