濵田暁彦医師 コラム No.106
2020/12/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる」 vol.240 2021年1月号掲載)

「2021年に想いを馳せて」


私が「くすぐる診療所」を執筆するようになってから今回で9回目の新年号となります。1年前にも前年2019年を振り返り「出来事の多い慌しい年」と書きましたが、それは平成から令和へと年号が変わり、消費増税や度重なる豪雨災害、幾つもの殺傷事件や香港の民主化デモなどが続いたからでした。しかし昨年2020年は皆様もご承知の通り「コロナウイルス」一色の年でした。
 東京オリンピック2020が延期となり、アメリカの大統領選挙では共和党トランプ政権から民主党バイデン政権へと移行し、日本では安倍政権から菅政権への移行が行われましたが、この原稿を書いている最中(さなか)に発表された2020年「今年の漢字」の1位は「密」でした。「ユーキャン新語・流行語」年間大賞も「3密」で、コロナウイルス感染症関連の言葉が2020年のトップを飾りました。またノミネートされた他の言葉を見ても、コロナ禍の「ステイホーム/おうち時間(SNS流行語大賞1位)」の影響が大きく、ゲーム「あつまれ動物の森」(ニンテンドー)やアニメ「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴:ごとうげ こよはる作)、ドラマ「愛の不時着」(韓国ドラマ)や「ソロ(一人)キャンプ」などの言葉が選ばれました。1年の後半はGoToトラベル・イートキャンペーンで、これまで我慢して来た旅行や飲食が一気に解禁されたかの様な人出となり、12月にはこれまでにない勢いでコロナ感染者が増加してしまいました。そのためにようやく軌道に乗り始めた経済対策も「年末年始のGoToトラベルキャンペーン全国一斉停止」で先行きが怪しくなってしまいました。
 医療の世界では近年「感染症」よりも、「癌」や「生活習慣病」に関心が集中していましたが、それもこの1年で状況が急変しました。これまで需要の少なかった「感染症専門医」がにわかに注目を集めるようになり、ワクチンや抗ウイルス薬の開発がかつてないほど急ピッチで進められています。人と人とが顔を合わせる会議や学会などがモニター画面上で「オンライン会議・学会」に取って変わり、電話やネットを活用した「オンライン診療」が導入されるなど、インターネットの普及で将来はこうなると予想されていたことが一挙に現実となりました。「将来を予想し、変化に迅速かつ柔軟に対応する」能力が必要な時代になったと痛感します。しかし「密を避けよう」と叫ばれる中で逆説的に見えて来たのは「人と人とは密接な交流・コミュニケーションなしでは社会生活が営めない。」という事実です。
 一時的に密を避けることができても永続的に密を避けることはできません。少なくとも家族や仕事仲間、学校のクラスメイト、親しい友人などと一生関わらずに一人で生きてゆくことは不可能です。そんな生きる上で最も根源的で大切なことを再認識させられた1年でもありました。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会